患者さまの笑顔をつくるために大切な歯科医療とは
歯科技工士の仕事について教えてください。
歯の詰め物や被せ物、インプラント、入れ歯、矯正装置などの作成や加工を行います。噛み合わせや仕上がりの美しさは最低条件として、患者さま一人ひとりに合わせた歯の色や形をオーダーメイドで仕上げていくことが重要なポイントです。
ほんの少しの加工の違いで、患者さまが感じる快適さは大きく変わってきます。ですから、より自然で満足度の高いものをつくるためには、医師との綿密なコミュニケーションも重要であり、歯科技工士としての能力を問われる部分でもあると考えています。
基本的には私たち医師が患者さまの歯型をつくり、歯科技工士にお渡しし、それを基に歯科技工物が出来上がるという流れとなります。そのため、歯型だけでなく患者さまの持つ様々な情報を、どれだけ歯科技工士に正確に伝え、受け止めてもらえるかによって仕上がりは大きく変わってきます。
デンタルクリニック ピュア恵比寿について教えてください。
虫歯治療や歯周管理などの一般歯科治療に加えて、審美歯科、ホワイトニング、インプラント、矯正、美容メニューなども行なっています。歯医者として歯の健康に関わることはもちろんですが、口元からお顔の印象をつくる「トータルビューティー」をコンセプトにしています。私たちが一番大事にしていることは、患者さまの笑顔です。笑顔のためには何が必要なのかを考え、一人ひとりに最適な治療法をフルオーダーメイドでご提案しています。
歯科治療には医師の技術力はもちろんですが、義歯や補綴(ほてつ)などの歯科技工物が欠かせません。この歯科技工物をどれだけ患者さまのご要望に合わせてご用意できるかも、とても大切なことです。
美濃さんと知り合ったきっかけを教えてください。
美濃さんとは18年(2019年現在)ものお付き合いになります。きっかけは、私が当時一緒に働いていたドクターの弟ということでした。趣味のサッカーなどを楽しむ仲間でしたが、お互いに独立するときに一緒に仕事をするようになりました。
これまで、素晴らしい技術を持った歯科技工士さんとはたくさんお付き合いしてきました。その中でも、美濃さんは技工士としての技術力はもちろんですが、私たちが求める「患者さまの潜在的なニーズを引き出し、笑顔をご提供するためには何が必要か?」という感覚も共有できる人だと感じました。
技術者として満足のいく完成品を仕上げたとしても、患者さまが満足してくださらなければ全く意味がありません。医師との連携を取りながら患者さまのニーズに応え、ご期待を超えるような技術を提供することが私たちの仕事です。
美濃さんは、当時から歯科技工士以前に人として他人の意見や要望を聞き入れ実行する能力に優れていました。そのため私は人として美濃さんを信頼し、歯科医師と歯科技工士として一緒に仕事ができると感じました 。
患者さまの満足のためには、
医師と技工士の連携が大切
onim designを選んだ理由を教えてください。
奥歯などの虫歯治療に使用する詰めもの(インレーやクラウン)は、主に機能性が重視されます。しかし、前歯など人目に付きやすい部分は、機能性に加えデザイン性も求められてきます。例えば、笑ったときに見える歯の長さや幅、唇の見え方など、患者さまのイメージに沿うものを創らなければなりません。
onim designさんは、デザインに対しての繊細な感覚と優れた技術力を持っています。例えば、煮物を作るとき、面取りをしないと崩れてしまいますよね。でも、下処理をしておけば長時間煮ても煮崩れませんし味もよく馴染みます。それと一緒で、丁寧な下処理を施すことが実はとても重要なのです。彼らは、デザインの美しさに加え機能性にもこだわった丁寧なものづくりをしてくれます。
素材の選定などは佐藤先生と一緒に相談しながら決めていきますが、デザインは技工士によってかなり個性が出てしまうところです。同じものをつくったとしても仕上がりは十人十色です。セラミックで歯をつくるとき、素材を何層にも重ねて形成していきます。その度に、少しずつ色を変え、光りの反射でどう見えるかを微調整しながら、より本物の歯に近づけていきます。しかし、美しさの感覚は人によって違いますから、出来上がりももちろん変わります。歯だけが主観的に美しい歯になったとしても、全体のバランスが取れていないと違和感が生じてしまうので、細心の注意を払います。
「左右の歯の形状がどうなのか」「患者さまがどう見せたいのか」によって仕上がりを変えていくことが必要です。私たち医師がつくった歯型を、完璧に仕上げるてくれる技工士さんはたくさんいます。しかし、患者さまの潜在的ニーズに沿ったものづくりを提案してくれる歯科技工士さんは、そう多くはありません。
歯をつくるうえで個性を主張する技工士さんもいらっしゃいますが、私たちは患者さまのイメージに近づけることを第一に考えています。歯科技工物だけを完璧に仕上げるのではなく、もっと広い視点でものごとを捉えていくことが大切です。
onim designの他技工所との違いは?
私たちは患者さまの心の奥底にある悩みを引き出すことはできますが、それをどう表現するかは技術者であるonim desgnさんに任せるしかありません。しかし、患者さまの真の要求を伝えることはとても難しいことでもあります。そのことを、美濃さんはよく理解してくれています。
以前、私は病院勤務の技工士として勤めたことがあります。その時に、現場で患者様と接するからこそ知りえる情報がたくさんあると知りました。そこで、より深く患者様の気持ちを理解するために心理学の資格であるNLP(神経言語プログラミング)を取得しました。私たちは直接、患者様の口の中に触れることはできませんが、先生方と協力して悩みを解決していくお手伝いをすることは出来ます。そのため、医院に足を運び患者様とコミュニケーションをとる機会を頂いております。
現場を知らない技工士さんの場合、意思疎通が難しいことがあります。しかし、onim designさんとはこまめな連絡を取り合うことが出来ています。
佐藤先生は、患者さまの求めるものを汲み取る力が非常に鋭いと感じています。それにお応えするために、私は技工士の立場から技術的な面で先生へご提案させていただくこともあります。それを快く受け入れ、より良いものにしようとしてくださるので、大変やり甲斐があります。
患者さまの満足度を高めるために大切なことは何ですか?
歯をつくるのに、歯型をとって仕上げるだけなら2週間程度でつくりあげることも技術的には可能です。しかし患者さまのご満足のいく仕上がりにするために、私たちの医院では2ヶ月ほどお時間をいただいています。その理由は、初めの1ヶ月は仮歯で過ごしてもらい本当に私生活で不都合はないか?また、ご家族やご友人からの意見も大切にしていただきたいと思うからです。
仮歯で不都合が見つかれば、そこから微調整を加えることが可能です。最終的な仕上がりをしっかりとイメージすることで、満足度の高いものをご提供することができます。
そのためには、とことんディスカッションできる信頼関係が大切です。指示書には書き表すことができない情報を話し合える関係性です。onim designさんとは、意見の違いを恐れることなく何でも言い合えます。さらに、技術を高める努力もしてくださいます。患者さまのために、お互いに成長し合える良い関係性が築けていると感じています。
デジタルとアナログの融合で、
自己表現をお手伝いする
業界の変化について感じることはありますか?
たった5年前を考えても、材質はより自然な透明感が再現され、強度も高まり割れにくくなるなど大きく変化しています。また、コンピュータの精度が進歩して装着感なども格段に上がっています。
これからはAIの発展により、さらにデジタル化が進むと考えられます。ビックデータなどを活用することで一人ひとりに合う歯を、自動生成することが可能になるかもしれません。しかし、患者さまの潜在的なニーズにお応えするものが出来るかは疑問です。データだけでは決して表現できないものがあるからです。ですから、デジタル化が進んでも、アナログでしか表現できない細かいディテールや、人の心に寄り添ったものづくりを大切にしたいと考えています。
デジタル化が進むことで生産スピードは加速するかもしれませんが、特にカウンセリングにおいては、気持ちに寄り添った人と人とのコミュニケーションがなければ成立しません。だからこそ、両方の良い部分を活かしながら、デジタルとアナログの両立が大切だと考えています。よく美濃さんとは勉強会などに一緒に参加して、新しい技術や業界の動向なども学んでいます。
歯をつくるうえで個性を主張する技工士さんもいらっしゃいますが、私たちは患者さまのイメージに近づけることを第一に考えています。歯科技工物だけを完璧に仕上げるのではなく、もっと広い視点でものごとを捉えていくことが大切です。
これから審美歯科に求められることとは?
歯に対する意識は時代によって変わっています。例えば、昔は女性が笑う際は手で口元を隠すものとされてきました。歯を出して大きく笑うのは良いものとされなかったからです。それが時代の変化とともに、白い歯がみえる笑顔が素敵だとされるようになりました。また、ソフトな印象の丸みのある歯から、主張のあるスクエア型まで、歯は自己表現の一つとして捉えられるようになってきました。
人が笑う時手を添えずに笑っていただきたい。そのためには機能性だけでなく、どのように歯を魅せたいのか、それをどう表現していくのかが、より一層求められていくと思います。
これからは、歯そのものの美しさだけでなく、口もとの形や頰の左右のバランス、鼻筋の位置など、全体を見て笑顔をデザインしていくことが大切だと思います。そのために、当医院ではトータルでご満足いただけるよう、美容系メニューなどもご用意しています。それが、患者さまの満足度を高め、最高の笑顔を見つけるお手伝いになると考えています。
日本歯科大学歯学部卒業後、日本歯科大学歯学部附属病院に勤務。医療法人社団友伸会 ほりまい歯科にて院長を務めたのち、デンタルクリニック ピュア恵比寿・伊勢原、デンタルクリニック ピュアDesignを開設。また、医療社団法人PUREを設立。日本歯科審美学会や、日本抗加齢(アンチエイジング)医学会など多数の学会に所属。
神奈川歯科大学付属歯科技工専門学校専攻科卒業後、都内某歯科医院等での勤務経験を経てユラデザイン株式会社取締役に就任。その後、同場所にて株式会社onim designを設立。くれない塾、シーケンシャルコースなど多数のセミナーに参加。NLP(神経言語プログラミング)プラクティショナー心理カウンセラー資格習得。
文:小高 朋子 編集:MULTiPLE Inc. 写真:樋口 晃亮